「パサジェルカ」
於:THEATRE1010 2004年12月11日13時 A席2階/18時 S席5列目センターブロック
(東京公演のみ 2004年12月2日~12月12日)
原作:ゾフィア・ポスムイシ 脚本・演出:倉田淳
|
|
Abyss | Cliff |
リーザ |
曽世海児 |
林勇輔 |
マルタ |
舟見和利 |
及川健 |
タデウシュ |
岩*崎大 |
山本芳樹 |
ワルター |
石飛幸治 |
笠原浩夫 |
ブラッドレイ |
内山翔人(客演) |
牧島進一 |
リヒテル・ボーマン(船長) |
船戸慎士 |
マリエ・マンデル(看守長)他 |
佐野孝治 |
シュルツ(親衛隊長)他 |
前田倫良 |
ハウゼ(看守)他 |
青木隆敏 |
ハインリッヒ(事務所長)他 |
寺岡哲 |
イエルジー(男囚)他 |
奥田努 |
シレナ(女囚)他 |
篠田仁志 |
ドゥルガ(女囚)他 |
下井顕太郎 |
オリガ(女囚)他 |
萬代慶太 |
オットー(男囚)他 |
大沼亮吉 |
セベリナ(女囚)他 |
関戸博一 |
カドゥル(女囚)他 |
松本慎也 |
ジュータ(女囚)他 |
三上俊 |
アンナ(女囚)他 |
荒木健太郎 |
ギュスタ(女囚)他 |
吉田隆太 |
マチェック(女囚)他 |
及川健 |
舟見和利 |
グラブナー(警務課長) |
山本芳樹 |
岩*崎大 |
親衛隊他 |
笠原浩夫 |
石飛幸治 |
親衛隊他 |
牧島進一 |
内山翔人(客演) |
インゲ(女囚カポ)他 |
藤原啓児 |
ヴェルナー(男囚カポ)他 |
河内喜一朗 |
*字違い
*感想*
原作と映画では、それぞれ違う感想をもちながら、テーマはよく分からないままでした。 女性2人の心理もとても複雑に思えて。
「黙過の罪」という言葉をきいても「リーザはただのドイツ国民じゃなくSSという当事者だったのに"黙過"?」と不思議だったんですね。それが舞台で観て「リーザもSSだったこと以上に、その後十数年の黙過こそが罪だと言われていたんだろうか」と気付きました。それまで彼女の何がどれ程責められているのか、分からなかったんです。
気になってたアウシュビッツの描写は、故意かどうか随分抑えてあるのを感じました。映像や写真で見せるより、舞台上で伝えてほしかったです。セットもよくありそうで特別な工夫もなく、囚人の制服はとても清潔。本当はぬかるみだらけで泥々だったそうですが。演出意図なのかどうか、汚れてるかきれいかどちらがよかったか分かりません。三角巾や帽子というのはあったんでしょうか?頭さらしているままでもいいと思いました。
幕があいて始まるお芝居は、久々に観ました。(学校から観に行ったヤツとか学芸会とかを思い出してしまうのであまりすきじゃないです)始まりとラスト、もっと舞台として印象に残るものであってほしかったです。特に今回の原作どうりのラストでは、直前のリーザとマルタのすれ違い場面のインパクトが薄まったように感じてしまいました。
全体には、力を込めて丁寧に作られているように感じられました。
時間はもう少し短くおさめてほしかった。船上シーンでは半ば原作の朗読のように感じられるところもあり、長い会話場面などどうにかできなかったのでしょうか。ダレてしまいます。
1つリーザの記憶が船上でよみがえる場面、ちょっとオカシかったです。
子供が字で書いたように「わんわん」と言いながら走ってくる時点で不自然だし、
それで収容所の犬を思い出す、というのはずいぶん無理があるように感じました。
*
収容所場面は、時にぼかして書かれている原作よりも、分かりやすかったです。 順番を移動したり縮めたり少し変更したりと、舞台にあわせて上手くまとめてあるのを感じました。
エリカなど出てくる手紙の内容は、映画と同じでしたか。「映画と同じ」というのは(脚本が原作者であっても)原作と同じ以上の抵抗も感じはしますが。
原作では私、タデウシュが殺されたというのも分かっていませんでした。
はっきりと銃殺場面が作られていたので「そうだったんだ?」とかなり驚きました。私だけかそこでマルタが叫ぶのは、何か違和感ありました。叫んだりしなさそう、というかそれもできない空気がありそうだったので。
*
原作でリーザはマルタに親しみを込めた話し方をしているのですが、映画では
いつも厳しい表情をして、他の看守と同様囚人に余計なことは喋らない感じがありました。
実際の看守はどうだったのでしょうか…。
Lifeの舞台では、原作以上にリーザがマルタへ慈愛に満ちた人間的な態度をとり
悲しみなどの表情をすごく露にしているのを感じました。マルタを支配下におこうとして失敗したことに
歪んだ感情があるのでなく、もっと別のものがあるような気がしたし本当にマルタをすきそうで。しっとというのも、マルタじゃなくタデウシュにしてるんじゃないか、と思ってしまうくらい。
マルタは弱々しく健気に描かれているように感じました。解放運動に関わっているとか、どんな状況でも屈さない
人のようには見えませんでした。あるいは男性が演じると却ってそういうところが出にくいのでしょうか。
ジュータに「顔をあげるように」と声をかけた時も、原作では負けないよう強い気持ちで声をかけたに
違いないと思えたのですが、舞台だとその強さはなくて、健気にかろうじて話しかけたようにみえました。
<11日マチネCキャスト>2階A席
2階席。床の傾斜がキツくて、怖かったですよ~。おっこちていきそう。
双眼鏡をつかっても、メインの人が何とか見分けられる程度で、細かい演技や表情までははっきり分かりません。
笠原ワルターも声がいつもと違った(老け声?)ので、誰か気付くのが随分遅れたほど。
冒頭のダンスシーンや人々の衣装がきれい。「重い話」と分かっているので素直に楽しめなかったけれど、吉田君は相変わらず身のこなしが本物の女性
のようで、ピンクのドレスもお似合い。及川マルタも目をひきました。
Cliffでは収容所での及川マルタと山本タデウシュが特によかったです。
及川マルタは特に弱々しく消え入りそう。シンの強さやリーザの内心を見抜くしたたかさは
感じられず、事前のインタビューどうり「可憐」になってると思いました。でも
暗い顔をして無言でじっと見つめる様子が印象強く、倒れた時も本当に病気にかかってるみたいでした。
山本タデウシュも、やつれて疲れた感じや、元職人だったというのがリアルで。 2人とも、本当の囚人のようでした。
林リーザはとても優しく苦痛を感じやすそうで、「なぜこの人が収容所でやっていけたんだろう」と思えるものがありました。
船上でのすれ違い場面、林リーザの叫びにも、一瞥をくれただけで去っていく及川マルタも、
とても深い印象あったんですが
やはりリーザにどういった感情があったのかは、はっきり分かりませんでした。「マルタ」と
呼んでしまうからには、はっきり認めたことになりますが、原作のように
半ばやけになった感じではなく、悲しそうで、やや感傷的にも思えました。
上に書いているように、タデウシュが亡くなる場面があるとは思ってなかったため
ショックを受けました。それから収容所でのラストシーンも。マルタの「人は生きることに執着すると奴隷になる」というセリフが合っていました。本当にこのままでは亡くなってしまうように見えるのだけど、死なずに収容所から出られたのかと思うと涙が出ました。
<11日ソワレAキャスト>1階5列目
席が違うと随分印象が変わる、と再認識。表情も細かいところもよく見えました。2階では「花びら」に見えたものは、星だったというのも分かったし。 でも
「暗転中、燃された紙の火が残ってきれい」だったのは2階だけ。1階では火が見えず、狙った演出かと思ったのに、偶然でしたか。
2幕の最初に小芝居もあったんですね。マチネではもったいなくも気付いてなくて。女性客に扮した及川さんは連れをぶってるし、妻の浮気に気付く前田さんもオカシかったです。今回は笑いなんて一切ないんだろうな、と思ってたからちょっと息抜きになりました。
船戸さんも、船長にぴったり。
Abyssは何より曽世リーザの印象が大。全ての軸にみえました。やはり看守としては
優しくて感情をだしがちだけど、「国家のためすべきなのだ」という気持ちも強く残っていそう。
マルタとのすれ違い場面だけは、Cliffでの方がすきでしたが。Abyssの方では、リーザが
ちょっと怒っているとか、ひっかかりがあるように見えたので。
舟見マルタもまっすぐ思いつめたような表情をしているのがよかったです。やはり強そうではなく
深い哀しみを背負って何とか耐えているようでした。
岩さきタデウシュは、体格もよく頑強そうで囚人らしくはなかったです(ヴェルナーもなども囚人の割には太め)。けれどマルタへの思いはとっても伝わりました。
Abyssでも山本さんよかったです。顔は同じはずが、タデウシュとは全く別人、
逆の立場の不遜な警務官に見えました。前田親衛隊長と共に、リアルにいやな感じが出ているようでした。
マリエ・マンデルやハウゼは、あまり恐ろしくなく印象も薄かったです。
マリエは「生まれ変わっても同じことをしてやる」と言う程残虐にも見えず、
「人より犬が大事」なハウゼも怒鳴ってるけどあまり迫力なく、復帰直後のせいか?
言葉も聞き取りにくかったです。 そういえばこちらのワルターも、ちょっとセリフ
聞きづらかったです。
Abyssではなぜかタデウシュが殺される場面も、収容所ラストシーンでも涙は出ませんでした。
今回は筋も知っており、慣れたせいかと思ったけれど後々も
これらの場面で思い出すのはCriffの方ばかり。やはり演技が上手くてリアルだったせいでしょうか。
しかも「すごく恐ろしい場面」として記憶に残ったようでした。観ている間は、
「アウシュビッツの描写がずいぶん抑えてある」と感じられたのに、生身の人が上手く演じると
それだけで怖いのかもしれません。
|
© Rakuten Group, Inc.
|